悲願成就の先にある、
喜びと達成感を味わう。
富田エンゼルス野球スポーツ少年団
8月19日明治神宮野球場で開幕した「高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」に、富田エンゼルス野球スポーツ少年団が初出場。県中地区からの出場は初の快挙でもあった。
今年の夏、聖光学院高校(伊達市)が戦後最高となる12年連続で甲子園出場を果たしたことが話題になったが、郡山市の軟式野球クラブ「富田エンゼルス野球スポーツ少年団」が創部37年目で初の全国大会出場を決めたことも話題になった。
富田エンゼルスは土日の週2回、富田東小グラウンドで小学1~6年生合わせて40人近くの団員が練習に励んでいる。といっても両日、午前と午後の2部練習となかなかハードだ。一昨年まで室内練習だけだったオフシーズンは、毎週末に楢葉町のグラウンドに通って練習。さらに今年4月からは水曜の夜に練習を追加した。これだけ練習をするには明確な理由があった。
この30年間、全国大会に出場しているのは、いわき地区の常磐軟式野球スポーツ少年団と小名浜軟式野球教室。どうしたらこの2強に打ち勝つことができるか? 考えた末に3年前から午前と午後の練習に取り組んだ。勝ちにこだわった練習方法にシフトした結果、悲願の全国大会出場を勝ち得たのである。
練習はランニングから始まりキャッチボールやトスバッティング、守備練習と至ってシンプル。しかし実戦に近い守備練習になると、監督の厳しい指導の声と強烈なノックが容赦なく飛ぶ。
監督は「練習でできなければ試合中できるわけがない。ただボールを追いかけて捕るのではなく、その先のことを考えて捕球する。さらにはグラブの出し方や強い打球に対して前で捕るのか後ろに下がって捕るのか。体で覚えることも大事だが頭で考えながら連動させないと絶対できない」と、小学生にはなかなか難しい課題を突きつける。しかしそれはすべて“勝利した先にあるもの”を味わうためと続ける。
自身、甲子園出場経験がある双葉高校(現休校)の野球部で4番を務めた経験から「ほかと同じことをやってもダメ。勝つことでしか味わえない楽しさや喜び、そして負けることで学ぶことがたくさんある。子どもたちにはそれをわかってほしい。練習を厳しくするのはそこから何かを学んで成長してもらいたいから」と、敢えて厳しくする理由を教えてくれた。
チームを率いるキャプテンに聞いてみると「接戦を勝ち上がって全国大会に出場した経験はとても貴重だとおもう。岐阜、高知、長崎、沖縄の代表チームと戦えたこともとても楽しかったし、厳しい練習を積み重ねた結果だと自信を持てた」と、話す。
今年、初めて全国という舞台を経験した団員たち。勝つ喜びを覚え、負ける悔しさを実感することで、野球の楽しさや何事にも真剣に取り組む難しさを学ぶ。ひと夏の経験は団員たちの成長へ大きな影響を与えたにちがいない。